音楽歴史・偉人紹介ビートルズ編⑩

201507/17

音楽歴史・偉人

第十回ビートルズとは一体何だったのかをご紹介します。

世界史で見るビートルズとは

‐「近代」という時代‐

日本人の子供たちが、田舎の子はまだ和服のまま、ドイツの歌を唱ったり、スウェーデンで開発された体操をしたりしていたころ、赤ら顔をした西洋の田舎の農夫も休日に街に出る時は、一張羅の背広に着替え、山高帽をかぶり、ステッキを持って出かけたものです。
ヨーロッパの都会の「高尚」な文化が、誰にとっても輝いていた時代があったのです。
今「ハイソ」という言葉がありますね。「ハイ・ソサエティ」な感覚。
これは「カジュアル」とか「オーガニック」とか、たくさんある魅力のなかの1つにすぎません。
そうではなく、ハイなもの、西欧のブルジョワ社会が規範にするものが絶対的に強かった時代、正装して流麗な音楽を聴きに行き、演奏が続くあいだ、背筋を伸ばして咳払い1つせずに聴いている、それが高級な市民であることの証だった時代があったのです。

1850年代のアメリカで、最高のアイドルは誰だったか。「スウェーデンのカナリア」と呼ばれたスターがいました。ジェニー・リンド。
当時の著名な興行師が、すごい額の契約金を払って、長期全米ツアーを打ったところ、これが大成功しました。
彼女は行く先々で、街の男たちを夢中にさせました。すばらしい声域でイタリア語の歌を歌う、まさに「芸術に身をささげる乙女」というイメージだったのでしょうね。
清らかで、純粋で、肉体を抜け出てヒバリのように飛翔し、天に突き抜ける芸術的なソプラノ。こういう声をした女性歌手は、20世紀の流行歌手にもたくさんいます。
当時、「サウンド・オブ・ミュージック」という映画を見に行って、主演のジュリー・アンドリュースのソプラノにしびれたのを今でも憶えています。「ド・レ・ミの歌」は知っているでしょうか。
サントラ盤を参考に話を進めていきましょう。

ジュリー・アンドリュースと子供たち「ド・レ・ミの歌」
(1965年)

この歌はメロディの輪郭がはっきりしています。
ドレミで始まって、レミファ、ミファソ、とだんだん鍵盤をあがっていって、高い方のドで終わる。最後におまけがついてきますね。
もう1オクターブ高いドまで、舞い上がります。それを聴いて「すごい」と思った方は、別に特殊だったわけではありません。
このアルバムは、全米のアルバム・チャートのトップを記録しています。しかしこれで最後でした。
「近代のヨーロッパの歌」がポップ・チャートを制した最後のアルバムになりました。
ジェニー・リンド以来保たれてきた美しさの1つの型が、これを最後に力を失ったという事です。

何が起こったのでしょうか。そう、ビートルズ現象です。
ビートルズ現象とは、プレスリーたちとともに始まったロックンロール革命が、クラスの平均的な男の子・女の子にまで届き、それから時代の先端を志向する大学生まで巻き込んだ現象を指します。
それまで、野卑なものとして「文化」から除外されていた、ドラムのビートや、喉をからすようなシャウトが、みんなにとって魅力的なものとして切り出されていき、「高級な音楽」も「野生の叫び」も、みんな一緒くたにして、とにかくいいものはいいのだ、と、みんながそれぞれの間隔で選択していく時代が始まったのです。
つまり、近代の規範が崩れ落ちていった、という事になります。
さて今回はここまでにしたいと思います！次回は「革命のヒーロー」についてまとめていきたいと思います。
さて今回までビートルズから少し外れて、音楽に沿って歴史を解説してきました。こう振り返っていくと、歴史の背景には音楽が非常に強く絡み合っているという事がわかりますね。
リフレクトスタジオの雑誌コーナーにもこういった詳しい雑誌やアンプの詳しい使い方が載っている雑誌がたくさんあります。
歴史について詳しく知識を深める他、音楽の知識もたくさん深めていき、充実してみてはいかがでしょうか！